新終活セミナー

認知症になっても地域で暮らし続けるために<①地域で暮らす>


認知症になっても地域で暮らし続けるために

高齢になるほど認知症の割合は増えるといわれています。
認知症になっても今の場所で暮らし続けるために、自分は、家族は、地域はどうしたらいいのか。
「上手に老いるための自己点検ノート」を作成し、認知症を含め、老い支度に関してユニークな提唱を続ける石黒秀喜さんに、お話を伺いました

 

石黒秀喜さん
一般財団法人長寿社会開発センター審議役。元厚生労働省大臣官房参事官。老いてどのような時間の使い方をして、どのような住まい方をして、どのような人生の閉じ方をするのか、自分が認知症になった時のための備え「上手に老いるための自己点検ノート」を作り“自己防衛のすすめ”を提唱。「老い支度」に関する講演など、多方面で活躍。

社会参加、筋力、栄養が大事

私は現知在63歳。団塊に世代の1人で、「大量死の時代」の当事者になります。『上手に老いるための自己点検ノート』※は団塊世代へのメッセージでもあります。
健康で長生きするための三大要素は、社会参加、筋力の維持、十分な影響と言われています。
外出頻度が1日1回の人と、1週間に1回あるかないかの人では、後者のほうが3・5倍も認知症になる確率が高いという調査もあります。上手に老いるためには、不健康期間を短くすればよいのです。そのためには、日常の体の健康が大切。介護予防・認知症地はこれに尽きます。
そうはいっても、高齢になるほど認知症のリスクが高くなり、「老・病・死」から逃れられません。一人ひとりが現実から目をそらさず、認知症について学ぶことが、これからとても大切になってくるのです。

義母が認知症になって……

私がこのようなことを始めるきっかけとなったのは、義母の認知症です。朝の3時、4時に起きて、カーテンを開けて行動しだす。最初は「うるさいなあ」と思っていたのですが、私なりに義母の頭の中を想像するようになりました。そして、目覚めた時は過去に戻っているのではないかと思ったんです。昔の義母は、厳しい義父に仕えて、4人の子どもを大学に出し、朝早くからビルの清掃会社で働いていました。たぶん、目が覚めて仕事に行かなきゃと思っているのでしょう。義母にとっては当たり前のことなのです。でも周りはそう思わないから、「なにやってるの」と止める。ここで本人と周囲との軋轢が発生します。
認知症について勉強してわかったことは、過去・今・未来という時間軸がうまく整理できなくなってしまうということ。だから、その場にふさわしくない行動が起きてしまうのです。そして、感情をつかさどる扁桃体は正常なので、楽しいとか嫌だという感情が生じ、蓄積されていくということでした。おかしな言動をしたとしても、抑制されたり、命令されたり、無視されたり、幼児語で話しかけられたりしたら、本人のプライドが傷つきます。そして、「怒られた」「失敗した」という負の感情が残ってしまい、異常行動の引き金になってしまう……。
だから、認知症の人と関わるときは、自分の感情を横において、本人の頭の中を想像してから声をかけるとよいのです。本人の顔を立て、自分自身を肯定的にとらえられるようにしてあげること。そうすれば、お互い良い関係、安定した関係が継続していきます。

自分の歴史、人となりを知ってもらう

「本人の顔を立てる」ためには、その人の人となりについて知る必要があります。そこで、これまで自分がどういう人生を歩んできて、どんな仕事をしてきたか、趣味や特技などを元気なうちに書いておくのです(『上手に老いるための自己点検ノート』など)。
子どもや親戚、お世話になるかもしれない未来の介護者など、周囲の人たちに自分のことを知ってもらうのです。そうすると、周りの人がその人の行動の理由を想像しやすくなりますし、顔を立ててあげやすくなります。
今のうちに先のことも書いておくといいですね。70歳、80歳、90歳になったらどうありたいか決意表明をして、その通りに努力していけば認知症予防にもなります。そして、遠くの親戚も含めて、自分に関わる人みんなに知ってもらうことをすすめます。
「認知症重度化予防実践塾」という勉強会を各地でおこなっていますが、参加したデイサービスの職員から、「この塾で勉強に取り組むまでは、その人の個別の情報にはあまり関心がなかった。デイケアをしている中で、その現象、目の前で起こっていることしか見ていなかったが反省し、関わりについて考えるようになった」と感想をいただきました。普段の体調(水分・栄養・運動の確保と便秘防止)を観察する、整えるサポートをする、その過程を通して本人を知り信頼関係を築く。それが介護現場でよく耳にする「その人らしさに寄り添う」ということではないでしょうか。

地域で認知症サポーターを増やす

さて、その上で地域で暮らすことを考えると、本人のケアも大切ですが、家族のケアも大事になってきます。家族がストレスを感じれば、それは結果的に介護を受ける側にも影響が出てくるからです。
そうならないために、早くから一人ひとりが認知症予備軍として意識し、困ったらSOSをどこに出すかを考えなければいけません。ですが、SOSを出すのが案外難しいのです。「恥ずかしい病気」と思いこみ、自分だけで抱えて、悶々としてしまう人もいます。しかし、認知症についての基本的な知識を持っている人が地域に大勢いれば、SOSも出しやすくなりますよね。
認知症について「知識を持っていた町」があります。岩手県南三陸町です。そこでは認知症サポーター養成講座を何度もおこなっていて、町民の1割以上が受講し、手首にオレンジリング(認知症サポート養成講座の受講者の証)を巻いていました。
震災時でも、認知症の人たちと一般の人たちが同じ避難所で問題なく過ごせたといいます。
知識があれば、家庭内で悪循環を起こさずにすむし、地域で徘徊している高齢者を手助けすることもできます。スーパー、交通機関、金融機関など人が集まる場所や、新聞配達の配達員向けにも講座を開いています。そうすると、たとえば新聞配達員が、「新聞がたまっているな」「庭の手入れがされてないな」という変化に気づくんです。
そういう理解者が増えるということは、地域で暮らす高齢者や認知症の人たちを支えることにつながります。
みんなが当事者意識で自助と互助を40歳を過ぎて介護保険料を払うようになったら、「認知症予備軍友の会」だと思いましょう。行く道は3つしかありません。自分がなるか、家族がなるか、地域の誰かがなるか。無関係ではないのです。町内会、老人クラブなどで勉強して、こういう会話ができるように、みんなが当事者意識で自助と互助をやっていくことが大切です。
認知症について説明できるくらいになったら、認知症カフェのようなところでお手伝いをしてもいいですね。一見、人のためのようですが、じつはそれは自分の生きがいになって、自助につながるのです。こういう暮らしができるしくみを町をあげて作っていくことが、これからの高齢化社会に求められていると思います。

※『上手に老いるための自己点検ノート』

認知症になっても、 自分の望む暮らしをおくり介護サービスを利用できるように自分の希望を書き込むノート。 人生歴や、 自分の特徴も記入する。 健康長寿のための観察記録付き。 認知症についても解説。

問い合わせ先

特定非営利活動法人全国コミュニティライフサポートセンター(CLC)

〒981-0932  宮城県仙台市青葉区木町16-30  シンエイ木町ビル1階TEL:022-727-8730  FAX:022-727-8737

URL:http://www.clc-japan.com

(出展『100年コミュニティ』2013年9月号 6~7ページ ※登場された方の肩書き等は、特記のない限り元原稿のままにしています)

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