息子が母を「呼び寄せ」ました! 母「九州から息子たちの近くへ。少しずつ慣れています」 息子「見守りがあって安心。ひんぱんに母を訪ねたり泊まったりできる自由もあります」
2022年6月から「ゆいま~る中沢」で暮らし始めたばかりの島崎道代さんは、鹿児島県の種子島出身。東京都八王子市に暮らすご長男夫妻が昨年、遠く離れたところに1人で暮らす高齢の母親を心配して、島崎さんを呼び寄せました。ゆいま~るシリーズでも呼び寄せのケースはありますが、親子でインタビューを受けてくださるのは初めてです。「ゆいま~る中沢」にたどり着くまでの経緯や、こちらの暮らしに慣れるまでの工夫、また現在のお暮らしの様子などを、島崎さんと長男ご夫妻に伺いました。
◆呼び寄せを考えるようになった理由
――まずは、「ゆいま~る中沢」に来る前のお暮らしについて聞かせてください。
島崎 これまではずっと種子島に住んでいました。17年前に主人が亡くなってからは1人暮らしでした。6人いるきょうだいは、九州の他県や関西圏に嫁ぐなどして、いろいろな所に住んでいます。すぐ下の妹だけは近くでした。
――お子さんたちは、いつまで実家にいらしたのでしょう?
島崎 子どもは男の子ふたりです。大学進学と同時に家を出て、そのまま九州には帰らず東京で勤めています。
――1人暮らしで不自由はありましたか。
島崎 主人が亡くなって、1人になっても不自由はなかったですけど、夕方になるとちょっと寂しいな、ということはありましたね。
――おひとりでも問題なく暮らしておられた?
長男 そうです。健康に問題もなく、そういう意味では不自由はなかったですね。
――お元気で自立生活が出来ていたわけですが、息子さんの呼び寄せのきっかけは何だったのでしょうか。
長男 去年の夏、母が昼間に畑に出て草むしりをしていたんですが、熱中症になってしまったんです。
島崎 汗をびっしょりかいていたんですけど、自分では熱中症だということがわからなかったんですね。
長男が、毎週日曜日の午後4時に電話をかけてくれていたんですが、そのとき私は倒れていたんです。「電話が通じない」と長男がいとこに連絡して、親戚が来て見つかったんです。
長男 半日くらい倒れていたらしいんですよ。救急車で運ばれて、2カ月くらい入院しました。
島崎 運ばれたとき、応答はできました。意識はしっかりあったと思います。
長男 退院することができたんですけど、以前とまったく同じような生活は難しくなりました。その時点で要介護3と認定されたのです。
長男嫁 要介護3認定と聞いて驚きまして、1人で生活するのは無理だと思いました。その時、主人は単身赴任中だったので、義弟に種子島に行ってもらいました。
◆自由に暮らせる高齢者住宅を求めて
――息子さんはふたりとも東京にいらっしゃるし、本格的に呼び寄せを考えたのですね。
長男嫁 そうです。最初は、施設に入るということは考えず、うちと、近くに住む義弟宅を2~3週間おきくらいに交代で行き来してもらっていました。
地域のデイサービスを利用したりしていたのですが、うちも義弟宅も階段がある住居環境で、デイサービス以外の日は母はどこにも出かけられないような状態でした。要介護3はつきましたが、認定が不思議に思えるほど歩けるし、普通に生活できている状態だったので、見守りがありながらももっと自由に暮らせる環境の方がよいのではないかと思うようになりました。
そこで、いろいろな施設を探しましたが、なかなか良いところが無くて。コロナ禍ということで、「面会は1カ月に1回、衝立越しに15分」というところも多く、自由度の高いところを探していたら、高齢者施設紹介センターで「ゆいま~る中沢」をすすめてもらったのです。
――実際に見学に来られた?
長男嫁 たまたまなんですけれど、母の主治医が「ゆいま~る中沢」に併設されている病院(あいクリニック)の先生だったんです。ここならば、主治医も変わらなくてすむし、デイサービスも迎えに来ていただければ変わらずにすむ。それも大きかったですね。
――島崎さんはどう思われましたか。
島崎 まさか、こういう所に来るとは想像しなかったので、よくわかりませんでした。
1人で暮らしてきて、「自分のおうち」しか知らなかったから。施設は考えもしませんでしたね。
長男 最初は、すごく嫌がっていましたよ。
自立生活も前のようにできない状態でしたが、自分の体のことは考えずに、九州に帰ると言い出して。
――どのようにして入居に至ったのでしょうか。
長男 子どもの側からすれば、ここに住んでもらえればサポートが受けられ、見守りがあり、夜も安心できます。自宅からも車で10分くらいと近いし、気軽に会いに来られます。
なんとか慣れてもらおうと思って、「ゆいま~る中沢」に母が入居してから1カ月くらい一緒に寝泊まりしました。ちょうど、私が定年を迎えたのでタイミングも良かったのです。
――今は慣れましたか?
島崎 息子が一緒に寝泊まりしてくれるうちに、だんだん慣れてきました。今も、夕方に来てくれています。
長男 徐々に、1人で暮らせるようになると思います。
長男嫁 ここならば、同居しなくても泊まれるし、こうして自由に会えることができるので安心です。賃貸の施設でも厳しいところは、寝泊まりはできないと聞きました。
――環境がガラッと変わったので、慣れるまで時間がかかるのもうなずけます。
長男嫁 最初はオートロックを覚えるのが大変でしたね。それまで一軒家しか住んだことが無かったので。
島崎 お嫁さんがオートロックのやり方を1、2、3と順番を書いて教えてくれたけど、なかなか覚えられなくて。
――もう少しお身体が弱っていたら、新生活に慣れるのが大変だったかもしれません。今だからクリアできたのかもしれないですね。
長男嫁 そうですね。今と比べるとうちと義弟宅を行き来しているときのほうが元気がなかったですね。自分の家ではないので、一緒に家事をやろうとしても、好きにできない。まだできることはたくさんありそうなのに、このままでは認知も進んでしまうかもしれない、と思いました。やることがないから日中は寝ていたりということも続いていたので、なんとなくこの生活は母にとってよくないな、と。自分の動きたいように動ける自分の部屋があったほうがいいいんじゃないかと考えるようになったんです。
◆ 野球が好き、甘いものが好き。ゆいま~るでの自由な暮らし。
――ようやく「ゆいま~る」の暮らしにも慣れてきたとのことですが、ふだんはどのように過ごされていますか。
島崎 毎朝、だいたい6時前に起きて、着替えてすぐに安否確認のマグネットを置きに1階に行きます。その後、外に出て、30分くらい散歩をします。シャワーを浴びて、朝ご飯。朝は、レタスなど野菜を洗ってサラダ、目玉焼きを作るなど、自分なりに好きなものを作って自炊しています。
――日中はどのように過ごされているのですか。
島崎 週3日デイサービスがある日は、8時40分にハウス前に迎えが来るので、夕方5時くらいまでデイで過ごします。仲の良いお友だちもできました。デイサービスの人が、同じテーブルのお隣にしてくれます。
夕食は、ゆいま~る食堂を利用しています。一緒に食べるお友だちもできました。
――デイサービスに行かない日は、どのように過ごされていますか。
島崎 行かないときは、テレビ見たり、家事をしたり、のんびり過ごします。野球を観るのが好きで、巨人軍が好きなんです。選手の名前もよく覚えているんですよ。夜、スポーツニュースを見て、安心してから寝ます。
長男 種子島の家にいたころは、BSで試合をよく見ていたのですが、ここでは入っていないので、そこは残念がっています。
――なぜ野球好きになったのですか?
島崎 主人が好きで、自分も見ているうちに好きになりました。昔の、王・長嶋時代から巨人が好きです。主人は、「よくわからない人が巨人を応援するんだ」と言って、巨人嫌いだったのですが(笑)。
――ほかに楽しんでいることはありますか。
島崎 種子島にいたころ、5~6人で集まって生け花を習っていました。毎年11月3日には文化祭があり、その時に展示をしていました。盛花とか、生花とか。上手ではありませんが、好きですね。
長男嫁 母は今日、久しぶりに生け花を生けました。花器や剣山は置いてきてしまったので、こちらで新しく買いました。楽しそうに生けていましたね。
――今はコロナ禍で休止していますが、中沢でも様々なサークル、イベントなどがありますから、再開したら、ぜひ参加していただきたいです。
長男嫁 あれば参加すると思います。
――朝・昼は自炊が多いということでしたが、毎週月曜日の移動スーパー、毎週金曜日のパンの移動販売なども利用していますか。
島崎 移動スーパーでは、毎週、必ず買っています。楽しみです。納豆や豆腐など豆類が好きなので、よく買っています。
長男嫁 パンの移動販売日は、ちょうどデイサービスに行く日なので、まだ行ったことがないようです。
――食べ物の好き嫌いはありますか。
島崎 お肉の特に脂身が好きでないですね。お魚も脂っこいものはあまり好きじゃないです。
甘いものが好きですね。朝起きて、一日のはじまりは、甘いものを食べること。和菓子が好き、あんこが好きです。
長男嫁 母はレトルト食品が苦手なので、食材やお惣菜を補充しています。もう少し近くにスーパーや商店街があると、自分で買い物に行けていいなと思います。
島崎 ギョーザも好きで、ミンチとニンニクをおろして、皮に包んでね。スパゲッティーなども実家では作っていたんですが、今は、お味噌汁とかサラダとか、決まったものを作ることが多くなりました。
長男嫁 火の心配があるようです。こちらはIHなので安全なのですが。これから少しずつ慣れて、レパートリーを増やしてもらえればと思っています。
――早起き、自炊と、規則正しい生活のご様子ですが、健康に気を付けていることはありますか。
島崎 夜寝るとき、必ず首元にタオルを巻いて寝ています。風邪をひかないように。そのせいか、風邪もひかず、熱が出ることもないですね。
長男嫁 昨年11月、寒くてコロナも流行していた頃にこちらに出てきて心配したけれど、家族が風邪をひいても、母はまったく大丈夫でした。
――これから、何か楽しみにしていることはありますか。
島崎 そんなに楽しみにしていることはないけれど(笑)。息子たちが顔を見せてくれた時はよかったーと思います。
買物も、お嫁さんに連れて行ってもらって京王デパートに行って衣類を選んで買いましたが、楽しかったです。
デイサービスに行って、友だちができて、「今日も来たね」「今度は何曜日だよ」とお互いに声を掛け合う、そういう時が楽しいですね。
隣のテーブルの人たちが「しまばあちゃん、お茶どうぞ」と言ってくれるので、私も同じように返しています。
長男嫁 ゆいま~る食堂でもお友だちはできたようですが、デイがない時の昼間ももう少し入居者の方と話せる機会があると、もっとここでの暮らしを楽しめると思います。
島崎 人見知りなんです。性格でしょうね。デイに行っても、他の人のテーブルに行ってお話しするということはないんです。
長男 人としゃべるのは脳も活性化してよいと思うので、少しずつ慣れてくれればと思います。
◆呼び寄せを考えている人へのアドバイス
――長男ご夫妻に伺います。お母様の引っ越しや手続きは大変ではありませんでしたか。
長男 実家はまだそのままで、特に何かを持ってくるということもなかったです。電化製品、家具などは、すべてこちらで新調しました。なので、特別大変だということもなかったですね。
おもに、私たち夫婦とうちの息子(長男)とで引っ越しをしました。息子は、おばあちゃんのところに結構来てくれています。
――お孫さんが来てくれるなんて嬉しいですね。
島崎 種子島にも小さいころよく来ていました。私たち夫婦が迎えに行ってね。朝は縁側にテーブルを出して、夏休みの宿題をさせていました。主人が庭の手入れをしながら見守っていて、孫は「おじいちゃん、もう宿題終わったよー。見てちょうだい」って、そんなやり取りを覚えています。
長男嫁 うちは男の子ふたりで、ふたりとも野球をしていたので、大きくなるとまとまって休みが取れずに行けませんでしたが、近くに来たのでまた交流できています。
長男 テレビで野球中継を見ながら、孫と野球の話をすることもありましたね。母は巨人ファンだけれど、うちの息子は阪神ファン(笑)。
――年代を越えて共通の話題があるのはいいですね。
親の呼び寄せを考えている人へ向けてアドバイスがあればお願いします。
長男 アドバイスになるかわからないけれど、自立ができる・できない瀬戸際の場合、少し訓練すれば自立が可能という場合は、サービス付き高齢者向け住宅はいいと思います。サポートがあって安心だし、本人も自由に暮らせて自立を保てる仕組みだと思う。夜間や何かあった時も非常ボタンが部屋に数カ所ついているから安心できます。
あとは自分たち家族ができるだけ顔を出して、安心させようと思っています。
ここまで家族が自由に来られる高齢者住宅はあまりないので、同じような考えの人には、お世話になった方がいいよ、と伝えたいです。
また、近くに呼び寄せたことで、これまで丸1日かかっていた距離が車で10分になったので、お互い安心できます。
――息子さんたちが近くにいると安心ですよね。
島崎 台風が来ると不安でした。しょっちゅう、息子に電話していましたね。こちらとは違って、風もビュービューいってすごいし、瓦が落ちるとか、隣の木が折れて飛んでくるとか大変ですよ。今は安心しています。
慣れるまでは緊張するという島崎さん。息子さん曰く、この日のインタビューも当日まで内緒にしていたそうです。そのわりにはよどみなくこちらの聞きたいことに的確に答えてくださった島崎さんは、好きな野球の話、甘いものの話などは嬉しそうに話してくださいました。また、4人のお孫さんの誕生日はすぐに言えるなど記憶力もバッチリ。なにより、慣れるまで付き添われた長男ご夫妻ととてもよい距離感で過ごされているのが伝わってきました。90歳近くで新しい暮らしに踏み切った島崎さん。これからも、ゆいま~る中沢で自分らしく過ごしていけるよう、長男ご夫妻と協力しながらスタッフ一同サポートしていきたいと思います。(2022/9/15 インタビュー)