忙しくも充実した人生後半期を楽しむ
高齢者に必要なのは、「きょうよう」(今日用事がある)と「きょういく」(今日行くところがある)といわれますが、それを実践しているのがゆいま~る中沢居住者の桑原節子さんです。40代から始めた太極拳は、いまや指導する立場に。コロナ禍でも、回数や時間を調整して、続けていらっしゃいます。ほかにも「毎日出かけている」くらい、活動的に過ごされている桑原さんの暮らしをご紹介します。
――ゆいま~る中沢にいらっしゃる前について、教えてください。
「臨床技師として40年間、都内の病院に勤務していました。住んでいたのは横浜市でしたので、片道1時間以上かかり、大変でした。
横浜では、母と二人でマンションに暮らしていました。
母が介護生活となってからは、仕事との両立が難しく、介護休暇も考えて上司に相談しましたが、「困るなあ」と言われてしまって……。当時は、一度しか介護休暇が取れなかったこともあり、結局あきらめて、なんとか仕事と介護を両立させていました。
私が57歳の時、母が亡くなりました。一人っ子できょうだいもなく、結婚もしなかったので、早くから高齢者住宅の入居を考えていました」
――高齢者住宅はいくつか見学されたのですか。
「最初の計画では、だいたい定年後10年くらいは一人暮らしで大丈夫だろうと。70歳前後でどこかに入居したいと考えていました。
ですので、70歳の2~3年くらい前から、高齢者住宅の資料を集め始めました。5~6カ所、見学しましたね」
――ゆいま~る中沢に決めた理由は?
「見学したところは、介護付の豪華な施設が多かったんです。立派なシャンデリアがあったり、プールやトレーニングルームが併設されていたり。しかし、それが自分に必要か?と思ったのです。トレーニングルームはいいけれど、シャンデリアなど豪華な設備はいらないし、その分、値段が高くなります。
また、定年後、田舎暮らしにあこがれる人も多いのですが、私は全然そういうことはなくて、むしろ都心に近いところで、お芝居を見たり、コンサートに行ったりできる暮らしを続けたいと思っていました。ですので、駅までの距離とか、都心へのアクセスを重視していたのです。
お友だちに誘われてゆいま~る中沢の見学会に参加したのですが、ここなら駅から離れていないし、都心にも近い。そのわりに自然も多くていいなと思いました。そして、豪華な設備もないのでお値段も納得でき、シンプルに生活できる、とゆいま~る中沢に決めました」
――ゆいま~る中沢での暮らしはいかがですか。
「以前とそう変わった感じはありません。入居者の皆さんとは、あまり深い付き合いはしないように心掛けています。長く暮らしていく知恵というか、ゆるいつきあいをしていますね。
どちらかというと、外へ出て、この近所の方とか、趣味を同じくする人たちとの付き合いが多いです」
――どのような趣味をお持ちなのですか。
「臨床検査技師の仕事は、座ってすることが多いのです。それで、40歳過ぎくらいから太極拳を始めました。ほかにも、ジャズダンスとか、いろいろ体を動かすことをやってみたけれど、太極拳が一番私に合っていました。
それからずっと続けていて、決して運動神経はいい方ではないのですが、今は人に教えるようになりました。週1回、町田市まで教えに行っています。今はコロナ禍になり月に2~3回になりましたけれど。太極拳は普通の体操と違ってゆっくりですが、ゆっくりだからこそ、筋力がつくんです。結構きついので、できる範囲でやってください、とお話しています。
少し離れているので、原付バイクで通っていましたが、今年、4月の誕生日を機に、後期高齢者ですので危ないなと思って、電車に変えたところです。教えに行くのがしんどくなってきたのですが、辞めさせてもらえません(苦笑)」
――ゆいま~る中沢でも、教えていらっしゃるのですか。
「中沢では、月2回、中国体操を教えています。中国体操は、太極拳よりもとっつきやすいのです。最近はコロナ禍なので、少し短めの30分くらいで終わりにしています」
――太極拳のほかにも趣味はあるのでしょうか。
「ヨガを週1回習いに行っています。なかなか先生のおっしゃるようにはできなくて、ヨガのマネのような感じです。休憩なしで2時間はやりますね。以前は原付バイクで通っていましたが、今はバスになりました。
女性専用のフィットネスにも、週3回は行くように心がけています。
あと、火曜日はオカリナをやっています。お友だちに『一緒に練習しませんか』と誘われたのです。本当は一人でやるほうが好きなのですが、せっかく誘ってくださったし、じつは昔、オカリナをやっていたことがあり、少し心得があるので通っています。
また、これもお友だちに誘われて、地域のコミュニティセンターの健康スポーツ部という部会に入っています。月に1度部会があって、ウォーキングや軽スポーツを企画して、一般募集をします。下見として同じところに3回くらい行って、時間を計ったり、トイレの場所を調べたりするので、結構歩きます。そのうえで、計画を立てて、ポスターを作ったり、地域広報に載せたりします。
しかし、このところはコロナの影響で、すべて中止になってしまいました」
――コロナで予定が狂ってしまいますよね。それにしても、教えたり、習ったり、活動的ですね。
「毎日、何かしらあって出かけていますが、土日は、基本的にゆっくりお休みしています」
――1日はどのように過ごされていますか。
「朝は7時ごろ起きて、10時くらいまでに、朝食、ラジオ体操、掃除、洗濯などをすませるようにしているのであわただしいです。安否確認が終わってから、読書をしたりビデオを見たりして、昼くらいまでは比較的ゆったり過ごしています。
昼からは、ほとんど毎日出かけています。町田の太極拳は午前中なので、この日だけは朝食がすんだらすぐに出かけます。
食事は、朝・昼は自炊しています。夜はお弁当だったり、外食だったり。多摩センター駅、唐木田駅付近に行ったりしていますね」
――暮らしの中で、気を付けていることや工夫していることはありますか。
「あまり忙しいのはよくないのですが、わざと忙しくしている面もあるんです。明日、どこかに行かなくてはならないと、気分的にもシャンします。何もないよりも、行くところがあったほうが規則正しい生活ができると思います。
ただ、後期高齢者だから、もう少しのんびりしてもいいんじゃないかとも思っていて、少しずつ減らしていこうかと考えているところです。
とにかく無理はしないこと、できないことはできないとすることですかね。と思いながらも、結構無理しているのかもしれません(笑)」
――お元気な桑原さんですが、不安なことはありますか。
「最近、物忘れがひどくて、しょっちゅう探し物をしているんです。直近のことをすぐ忘れるので、認知症の前期段階かと思って、それが不安です。ここで最後までいられたらいいのですが、認知症になったらとか、寝たきりになったら、と考えると不安になります。
からだは特に悪いところは無く、先日も下肢静脈瘤の手術をしたばかりなのですが、血液検査の結果も異常なしでした。人間ドックも1年に1度受けて、自分の状態を把握しています。脳ドッグも受けましたが、『年相応ですね』と言われました」
――それならば、物忘れもそんなに心配ではなさそうですね。からだも健康ですし、自己管理をきちんとしていらして、素晴らしいと思いました。
最後に、住み替えを考えている方へアドバイスがあればお願いします。
「69歳で入居したとき、お友だちには早いと言われました。私は相談する相手もいなかったので、自分で決めなければいけない、マンションの処分もしなければいけないということもあって、早いうちにと思ったのです。40年勤めたおかげで退職金もいただいたので、使い込まないうちに(笑)と思って。
決めるときは、これから自分が何をしたいかが、一番大事だと思います。自分が大切にしていることを続けられるか、ということです。私はこれまでと変わらない暮らしを望みました。
私が、ゆいま~る中沢で一番いいなと思ったのは、自由です。友人たちから、ボスみたいな人がいて(笑)お伺いを立てなきゃいけないの?とか、門限はあるの?とか、外泊できるの?と聞かれますが、まったくの自由ですから。これまで横浜で住んでいたマンションと変わりなく、それにプラスして安心があるのがいいですね。以前住んでいたマンションも隣近所の付き合いはありましたが、だからといって、何かやってもらうことはありませんでした。
一緒に見学した友だちは、いろいろなところを見に行っているけれど、まだ決められていません。100%満足するところはないので、これだけは譲れないというところを大切にして、選ぶのがいいのではないかと思います」
定年まで勤め上げ、お母様を看取られて、70歳手前で予定通りに住み替えられた桑原さん。多くの趣味を持つことで、忙しくも充実した人生後半期を過ごされていらっしゃいます。
これからも、健康寿命を延ばしつつ、いつまでも中沢でお暮らしいただけるようスタッフ一同寄り添っていきたいと思っています。(2021.8.4インタビュー)