ゆいま~る伊川谷 暮らす人々の声

60代で引っ越し“気力体力のあるうちに”


ゆいま〜る伊川谷
Aさん(70歳)の場合

(入居:2009年11月)

長く住み慣れた南大阪から、まったく馴染みのなかった伊川谷へ。建設中のハウスを見学し、ほぼ即決だったというAさん。

ここを選んだ理由は? 約3年暮らされた感想は? お話をうかがいました。

Q:高齢者住宅に住み替えようと思われた理由は?

Aさん 原点は「母」です。介護が必要になってから私が身元引受人になって世話をしましたが、本当に大変でした。母はずっと仕事をしていた人で、引退後は一人暮らしをしていました。「年をとって一軒家の管理は大変でしょう。悪いところじゃないから、とにかく見に行ってみよう」と高齢者住宅の見学に誘っても、頑として首を縦にふってくれませんでした。

ところが、76歳で大病を患い、自分から「どこか探して」と私に頼んできたのです。まず、自宅に近かった西宮の高齢者住宅に入居してもらいました。24時間の見守りがあり、部屋も広くて快適に過ごしていたのですが、当時、南大阪に住んでいた私が通うには遠すぎて…。それで、南大阪にある高齢者住宅に引っ越してもらいました。母は人のお世話をするのが大好きな人だったので、ここでも、バスツアーを企画したり、席順を決めたり、元気に、楽しく、毎日を過ごすことができました。

そんな母も89歳で亡くなりました。その高齢者住宅は所有権方式だったので売却手続き、ずっと空き家にしていた自宅の処分など、事後処理が本当に大変でした。実家からも、住んでいた高齢者住宅の部屋からも、びっくりするほど大量の荷物が出てきました。母の想いが詰まった品々だと思うと、軽々しく処分できなくて、思った以上に時間がかかり、気も使いました。

「生きている間も死んでからも、私の身の処理で周囲に迷惑をかけることのないよう、今から準備しておこう。いつでも身軽に引っ越せるように荷物も最小限にしておこう」。それが、母が私に与えてくれた最後の教訓でした。

Q:ゆいま〜る伊川谷への住み替えを決められた理由は?

Aさん 南大阪にある高齢者向け分譲マンションを見学に行った時に、高齢者住宅情報センターのスタッフと知り合いになり、他にもいい高齢者住宅があれば紹介してほしいと頼んだのです。母の時に懲りていたので、「分譲型ではなく賃貸型がいい」といったら、「ちょっと面白いところがあるから」と勧められたのがここでした。

見学に来たのはまだオープン前で、建設中の建物を見せていただき、駅前の事務所でお話を聞きました。正直にいって、100年コミュニティ構想や完成期医療といった理念はあまりよく理解できませんでした。運営会社と入居予定者が定期的に入居者懇談会を開いて、暮らしのルールを検討しているというハウスづくりの姿勢には共感しましたが、今からその仲間に入るというには気後れがして、結局、入居者懇談会には一度も参加しませんでした。

そんな私がなぜ、ここへの入居を決めたのか。それは、なんといっても「駅前約1分」の便利さにあります。年をとればとるほど、体力も気力もなくなってくるので、交通の便のよいところに住むというのは、高齢期をフットワーク軽く過ごし、毎日の生活を楽しむために欠かせない条件だと思っています。

『行きはよいよい、帰りは怖い』と童謡でも歌われているでしょう。行きは元気があるから気にならない距離でも、疲れて帰ってきた帰りは、駅からの道のりがすごく遠く感じて、ついタクシーに乗ってしまう。そのうち、外出そのものが億劫になる。そうはなりたくなかったんです、私。その点、ここは、プラットホームから建物が見えています。駅に着くと、「我が家に帰ってきたぞ」と思える安心感は、ちょっと他のハウスにはない魅力ではないでしょうか。

Q:今、どんな暮らしをされていますか?

Aさん ハウスで開催される講座に参加するなど、毎日を楽しく過ごしています。お買い物は西神中央(地下鉄で2駅先)が多いですね。複数のショッピング施設やスポーツクラブもあって本当に便利です。ハウス主催の講座を一緒に受けている方や、廊下や食堂で会ったらおしゃべりする方などハウス内のお友達に加え、散歩で知り合った地域の方とも仲良くしていただいています。

今はまず、自分自身の暮らしをいかに充実させるかが大切だと思っています。お友達と、待ち合わせて大阪まで観劇やコンサートに出かけたり、奈良へ仏像を見に行ったり。けっこう忙しいんですよ(笑)。

Q:60代での入居ですが、早すぎるとは思われませんでしたか?

Aさん いいえ、全然! かねがね、“終いのすみか”への住み替えは、“体力、気力のあるうちに”と思っていましたから。それまでの住まいの掃除や荷物の整理、引っ越しした新居の片付けといった体力的なものは人様のお世話になることもできますが、気力が必要なことは人様に代わっていただくわけにいかないでしょう。

たとえば、どこに住み替えるか、候補を探して検討したり、契約を交わしたり。人様にお願いすることもできるでしょうけど、やっぱり自分で探して、自分で決めたいじゃないですか。それに、引っ越してからその住まいや地域に馴染むにも、すごく気力が必要なんです。せっかく新しい住まいに引っ越してきたのに、周囲に馴染めずに引きこもっていたのじゃ、つまらないでしょう。だから、60代での“終いのすみか”への住み替えは決して早すぎることはないと、私は思います。このハウスには、私以外にも60代で入居された方が大勢いらっしゃいますよ。

Q:ご自身のエンディングをどう考えておられますか?

Aさん 「焼かれるのは嫌だから、背後に山を抱いた海辺に埋めて」といっても無理でしょう? だから、死んでからのことはいいんです。成年後見人の手続きはまだしていませんが、とにかく、周囲の方の手をできるだけわずらわせないですむよう、きちんと準備しておきたいと思っています。「断捨離」は無理ですが、できるだけモノはためこまないように心がけていますし、終末期に受けたい看護・介護についても書いておこうと思っています。

母が、翌日のお花見ツアーの座席を決めている時に脳梗塞で倒れ、寝つくことなく亡くなったので、私もそんな死に方ができるんじゃないかと思っているのですが、いざという時のために書いておかないといけませんね。延命はしてほしくないけれど、救命医療なら受けたいと思っていますので、やはり、最期は病院で迎えることになるのでしょうね。

Q:最後に、ゆいま〜る伊川谷の運営や施設について、課題と感じておられることがあれば教えてください。

Aさん 24時間の見守りがあり、必要な時に必要な手助けをしていただき、入居者の自主的な活動や地域との交流を支援してくださるなど、スタッフの方は本当によくやってくださっています。運営会社やスタッフの努力があればこそと感謝しています。

ただ今は、入居者の平均年齢が比較的若いから、そんなには手がかかっていないと思うんです。でも、あと5年、10年過ぎて、入居者がもっと年を重ねたら、今とは比較にならない労力がかかる場面も出てくるのではないでしょうか。そんな時に今の体制で大丈夫なの?という懸念はあります。

今は赤字運営で、「できるだけ利用してください」と協力を求められることの多いゆいま~る食堂ですが、入居者が高齢化し、利用率が高まると、今の状態では充分なサービスができなくなるのではないかしら。入居者の高齢化を視野にいれた計画があるなら教えていただけると安心なのですが、そうした話は出てきていませんね。

人間は欲深いから、よくされればされるほど、「もっと、もっと」と要求が高まります。しっかり包み込まれて身を預けていたい。歳をとればとるほど、その欲求は高まっていきます。
入居者が今よりも年齢を重ねた何年後かに、ゆいま〜る伊川谷はその真価を問われる正念場を迎えるかもしれない。そんなことも考えるんですよ。

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