ゆいま~るシリーズは自立の高齢者が元気なうちに住み替え、健康寿命をできるだけ延ばし、自分らしい暮らしを続けることを大切にしている高齢者向け住宅です。しかし、誰しも最後まで健康でいるのは難しい。いつか介護が必要になる日が来ます。そんなとき、「介護付の高齢者住宅に住み替えなければいけないの?」と不安に思う方もいるでしょう。
ゆいま~るシリーズの居住者で、介護が必要になっても、地域の介護サービスを使いながら自分らしく暮らしている方はたくさんいます。そのためには、ご本人を中心に、ご家族・フロントスタッフ・地域包括支援センター・ケアマネジャー・介護サービス業者の連携が欠かせません。
敷地内に小規模多機能「ぐり~んはぁと」(弊社運営)がある「ゆいま~る多摩平の森」の味元佳恵ハウス長にお話を伺いました。
「現在、入居総数65名の中で、自立は22名。そのほかの方は要支援から要介護で、介護サービスを利用しています。敷地内に併設する小規模多機能『ぐり~んはぁと』利用者は8名(2023/7/1現在)。そのうち5名は入浴サービスを利用していて、お風呂に行く感覚で通っていらっしゃいます」と味元さん。
小規模多機能のほか、地域のデイサービスや訪問診療・訪問看護・訪問介護など利用されている方もいるとのこと。例を挙げてお話していただきました。
【事例1】80代女性Aさん 要介護2
Aさんは認知症状があり、1日お部屋にこもっているので、ご家族から「デイサービスに通って、人とふれあったり、生活リズムを整えてほしい」というご希望がありました。しかし、Aさんはデイサービスへ行くことを嫌がり、ご家族が心配していらっしゃいました。そこで、地域の「敏腕ケアマネ」に直接相談し、まずはヘルパーさんを入れて家族以外の人に慣れてもらうところから始めました。そして、慣れたヘルパーさんに、デイサービスへ送り出してもらおうという作戦です。Aさんが初めてデイサービスに行くときは、当日出勤のフロントスタッフみんなで送迎車までアーチを作り誘導。すんなり乗ることができました。その後、Aさんに気の合う仲間ができ、楽しんで通うようになりました。今はデイを週2回に増やすことができ、ご家族も安心されています。
Aさんは、ヘルパーさんが週2で清掃、食事は外部の配食サービスを利用、週2日ご家族がフォローしています。認知症状はありますが、できることは自分で行いながら、穏やかに暮らされています。
【事例2】90代女性Bさん 要介護4
Bさんは、90歳を過ぎても訪問診療・訪問看護、訪問介護を組み合わせながら、意欲を失わず、自分でできることは行い、ハウスでお元気に暮らしています。毎日、朝昼夜にヘルパーさんが来訪。リハビリパンツを利用していますが、基本トイレは自分で。ハウスのフォローとしては、ゆいま~る食堂から、昼と夕に刻み食を配食し、夕方、ヘルパーさんが入らない時間帯に、水分補給の声掛けに訪室しています。毎朝の安否確認は、フロント前に名前を記載していただくのですが、Bさんの場合は特例としてスタッフが居室を訪問。1日1度はお元気な姿を確認させていただいています。
【事例3】70代男性Cさん 要支援2
Cさんは、脳疾患を患い片麻痺があり、杖歩行の方で、ここに来る前は介護付高齢者住宅にいらっしゃった方です。そこでリハビリを受けられた結果、要介護から要支援となり、自立生活のお墨付きが出たということで、ご家族が「ゆいま~る多摩平の森」で自由に生活させてあげたいと望まれ、入居に至りました。入居前にご家族からCさんの様子を事細かく聞いていて、リハビリのあるデイサービスを希望とのことでしたので、入居と同時に利用できるよう地域包括支援センターに連絡を入れながら動いていました。
現在、朝のラジオ体操に参加され、昼食・夕食はゆいま~る食堂を利用しており、スタッフもからだのバランス感覚など注意しながら遠目から見守っています。入居翌日、Cさんはご家族に向けて「ここに連れてきてくれてありがとう」とメールをしたと話してくれました。スタッフ一同とても感動しました。
【事例4】70代男性Dさん 要介護1
Dさんは、高次脳機能障害があり、デイサービスへ行きたがりませんでした。ご夫婦で入居されていますが、四六時中ご一緒なので同居ご家族のストレスも高まり、少し離れた時間も必要と考え、Aさんのときもお世話になった敏腕ケアマネジャーさんに相談し、デイサービスらしくないところを検討中です。Dさんは、いわゆる「みんなでお遊戯」的なところを嫌がっていますので、ジムのようなところがいいのではないかとケアマネさんが提案してくれました。このケアマネさんはサービス付き高齢者向け住宅のスタッフ経験があり、私たちスタッフの立場や気持ちを理解してくれ、人によってどのようなケアやフォローが必要かなど迷う時に相談しやすい方です。ただ、デイサービスを見学するに至ってもなかなかうまくいかず、高次脳機能障害支援センターの相談員にもつなげ、進捗情報を共有している段階です。
「当事者には支援を、家族には支えを」という気持ちで、よりここでの暮らしが充実できるようにフロントスタッフが尽力しているところです。
住み替え当時は「自立」でも、だんだん介護が必要になっていきます。サービス付き高齢者向け住宅のシステムとして限界はありますが、「できること、できないことを明確にしていく。そのうえで、どうしたらできるのか、というやりとりをしながら、本人が気持ちよく自分らしく暮らせる方法をみんなで考えています」と味元さん。
要介護の居住者が暮らせるよう、以下を大事にしてスタッフ間で共有しています。
1 . フロントが多方面との連携、情報共有できているということが、ご本人だけでなくご家族の安心感へとつながっている。ハウスは見守り、つなげることで安心した暮らしのお手伝いをする。ゆいま~る多摩平の森開設から11年。地域や人とのつながりは、積み重ねで培った財産と考え、大事にしていく。
2. ケアマネが居住者のところへ訪問するなどの際には、フロントに寄っていただくようにお願いしており、情報共有している。フロントができる生活サポート範囲と介護保険範囲の役割を明確にすることが大切。「できない」で済ませず、できるためにはどうしたらいいか話し合うことが大事。
3. 居住者が利用しているヘルパーさんを大事にする。ゴミ回収日以外でもヘルパーさん用のゴミ置き場を設けるなど配慮し、フロントに立ち寄りやすい環境をつくっている。
多方面と連携・外部スタッフとの意思疎通を大切にしてきた結果、フロントに人手がないときに受診同行を申し出てくれる、まわりに見学を勧めてくれるケアマネさんや、居住者の体調変化等をフロントに伝えてくれるヘルパーさんもいて、信頼関係が深まったと言います。
味元さんたちスタッフも、居住者の言動の変化などがあれば、迅速に地域包括支援センター、ケアマネジャー、介護事業者等に情報共有するようにしています。
また、「スタッフ誰もが対応できるように情報共有はスタッフ間も密にしています。1日、2日寝かせてしまうと、状況の変化が速いので、瞬時に対応するのがポイントです」と味元さん。
「守備範囲を広くしたい。大変だけど、そのほうが居住者の暮らしは豊かになりますから」――自立でも要介護でも自分らしく暮らせるハウスを目指して、スタッフたちの努力は続きます。(2023/7/7インタビュー)