ゆいま~る福ブログ

ゆいま~るお役立ちセミナー「お金から考える高齢者住宅の入居」①


老後の生活が心配。病気になったら、認知症になったら……。
今の家で最期まで暮らせるか、それとも高齢者住宅に移るのがいいのか。
「老後に3000万円必要」って言うけど、本当なの?
高齢者になったら誰でもかかえるこれらの心配も、まずは「自分」の現状を見つめること、そしてそれに必要なお金の計画を立てることで解決すると語る川添先生が、「ゆいま~る福」でお話してくださいました。

※3回にわたって、ご紹介します。
1回目…失敗しないお金の使い方とは、その心構えなど。

2回目…正確なデータとそうでないデータの見分け方、エンディングノートの書き方など。
3回目…計画表の作り方、後見問題についてなど。

講師 川添登巳雄さん
ファイナンシャルプランナー。行政や高齢者住宅のセミナーなどでも活躍。弁護士、税理士、司法書士など「士業」と民間企業の実務担当者等で構成される高齢者問題の専門家集団「シニアライフSOS」に参加。現在、副代表を務める。

1.だれにも迷惑をかけたくないと思ったら

高齢者の心配の中身

高齢期をどこでどう過ごすのかを考えるとき、人によって関心の度合い、心配の中身が違うというところからの整理が必要になります。いろいろな本も出ていますが、個々人によって抱えている問題は違いますので、それだけを読んでもあまり有意義とはいえません。
まず、自分は「何が心配か」を理解しましょう。
たとえば、自立できなかったお子様をお持ちの方。こういう方は、自分が死んだ後も子どもが暮らしていけるようにお金を残さなければなりません。それを第一に考えて対策を練っていくことになります。
また、自身の死後に子どもたちの仲たがいが心配である、先祖代々の土地をどうするか、会社をどうするか、税金が心配……など、それぞれ何が一番心配なのかを中心に対策を考えることが必要です。
そして、誰にも迷惑をかけたくないという方が最も多いのですが、その中でも、おひとりさま(結婚していない、離婚して一人)の場合、夫婦2人でお子さんがいない場合、子どもはいるけど遠方に住んでいてなるべく迷惑をかけたくない場合と、それぞれ潜在する問題と内包する心配事が違うのです。だから、その方々に合った対策をすることが最も大切なのです。

失敗するパターンとは

だれにも迷惑をかけたくないと思っている人が一番多いのですが、よくよく話をしてみると、その様に計画をしている方は本当に少ないのです。そして、多くのセミナー、個別相談を通して、うまくいかないパターンがだんだんわかってきました。
はじめに多くの人に共通するお金の誤解の話ですが、老後を過ごすのに、たとえばこの株を現金化してとか、この土地を売って、ここまでは投資信託で生活して……とやりくりを考えている人がいます。しかし、ある時期を越えると、そういうことができなくなるということを想定していない人がほとんどなのです。個人差が大きい中で少し乱暴に言うと、おおよそ80歳位までというのが、私の感想です。80歳になると、金融機関が高齢者扱いをして、大きなお金を下ろすことにとても慎重になります。私のお客さんは80代でも皆さんしゃんとしているのですが、金融機関は厳しくなる。ですから、80歳前までに、なんらかの対策が必要です。
あと、失敗する方の特徴として、せっかちで人の話を聞かない方。自分の聞きたいことだけ聞いたら、さっさと帰ってしまう方です。一人の心配は、住宅だけ、お金だけ、法律だけ、では解決しません。これらが円になった総合的な対策でないと解決できないのです。私はファイナンシャルプランナーですけれど、自分自身がいい高齢者住宅を知っていなければなりません。こういうことがわかっていないとどこかで失敗してしまいます。
また、情緒的な方。誰かに反対されて、すぐ萎えてしまう人です。たとえば、学生時代に優秀だった友だちに反対されると、それに引っ張られてしまう様な方です。
よくある話として、高齢者住宅を購入しようとしたら、子ども、きょうだい、友人達が反対するケースが多いです。友人から「まだ早い」といって反対される場合、その友人には夫がいて、お子さんがいて、二世帯住宅に住んでいるかもしれません。でも自分自身はおひとりさまだったり、子どもがいなかったりと、人によって環境や問題が違うにも関わらず、良かれと思って反対するのです。反対してくれる人は自分にとって大切な人であり、本気で心配してくれる人でもあるので状況変化に後ろ向きなのかもしれません。
しかし多くの場合、友達もきょうだいも先の事よりも反射的に反対してしまいがちです。近所に住む、夫と二人暮らしの姉から反対された人がいました。でも突き詰めると自分が心細いからという理由での反対です。「高齢者住宅に行ったら、私は一人になっちゃうじゃない、ここにいたら私が面倒見るのに」というわけです。しかし、面倒が見られるのは今です。たとえば10年、15年したら、どちらが面倒を見るかわからないですよね。
子どもの反対は、たちが悪いです。とくに息子。自分を例に出しますと、私は51歳で、父が80代、母がもうすぐ80代になります。この仕事するまでは「僕が面倒見るから!」「大丈夫だから、慌てないで!」と軽く言っていました。具体的には、玄関横の六畳間を空けておくというくらいで、介護は妻がするんだろうくらいに思っていました。確かにその時おふくろは喜んでいたと思います。でも、それでは解決しません。自戒もこめて、子ども側がどんな情報もっているか、疑ってみたほうがいい。びっくりするかもしれませんが、大抵は高齢者住宅=養老院というイメージしかもっていません。車イスで、みんなで輪になって「結んで開いて」をやっているようなイメージしかないのです。
子どもだから、きょうだいだから、友人だからと言って、情報も持っていない人の反対を真に受けてはだめです。まずは、どうしたら自分が幸せになるかを考えていくのが大事です。「自分が幸せになるために、自分の資産を使う」。
失敗しないためには、ここからはずれないように考えていきましょう。

山田さん(仮)きょうだいの場合

ここで、失敗事例について紹介します。
山田さんは、60代で、3人きょうだいの長女で、夫と独立している独身の娘さんがいます(図3)。弟夫婦は、お父さんが亡くなった後、膝の悪いお母さんと同居中。8歳下の妹さんは結婚が遅く子どもがまだ中学生で、教育費のためにフルタイムのパートをしています。仲も普通の3きょうだいです。


ところが叔母さんの件で大変もめました。叔母さんは85歳で、お父さんの妹さんです。離婚しておひとりさま、子どもはいません。働いていたので、お金はあると思っていたのですが、山田さんがお会いしたときにはすごく質素な暮らしをしていたといいます。なぜ山田さんがお会いしたのかというと、叔母さんが入院することになり、全身麻酔を打つので病院に提出する書類にサインが必要だからです。親戚の一筆が必要だからと言われたのですが、そのうち入退院を繰り返し介護状態になりました。そのままデイサービスなどを活用していたのですが、最後は自宅で亡くなりました。山田さんは、2年近く、叔母さんが認知症になるまでほとんど一人で付き合いました。弟は、自分はまだ働いているうえ弟の妻が同居の母との折り合いが悪いのでとても頼めないと言い、妹も仕事をしているからと手伝ってはくれませんでした。はじめは、叔母さんが支払い等全部自分でしていたのですが、そのうち認知症かどうかも確認できないまま、結果的に山田さんがお金を立て替えることに。その上、「あなた、私の財産目当てに来ているんでしょう」と言われて泣いたりしたそうです。
この暮らしぶりだから、お金はないだろうと思って亡くなった後に荷物整理をしていたら、脱衣所に「ガーゼ」と書かれた洋菓子の缶があった。テープが張ってあったので、取ってみたらガーゼが入っていて、その下に通帳と印鑑が入っていたというのです。通帳を見ると結構なお金があって、このお金があったら高齢者住宅への入居も可能だったのではないかと思ったそうです。立て替えた分も戻ってくるし良かったと思って、整理を進めていると、タンスの中に紙包みがあって、あけてみると3000万円の現金がドンとあったのです。
結果、きょうだい3人が遺産をめぐってもめました。叔母さん、山田さん、弟、妹、誰も幸せになってない。叔母さんは迷惑をかけた上に、姪たちを不幸にしてしまったという事例です。
私はこの叔母さまにお会いしてないのですけど、何を考えていたかは手に取るようにわかります。自分がどうなるか見据えて、対策をしていたのだと思います。きっと不安で、不安で仕方がなかった。誰にも迷惑をかけないで老後を送ろうと思っていたはずなのです。そのための節約ですし、在宅で死ぬまで過ごすという選択したのでしょう。
老後で必要なお金はいくらか、よく新聞・雑誌等で言われるのは3000万円です。3000万円もっていたおばさんは、老後に備えていたのでしょう。でも年を取るたびに不安感が増します。60代より70代、70代より80代、どんどん不安感が増して、結局お金を使えないまま亡くなってしまったのだと思います。
家も旧耐震の古い家、住み替えもしていない、情報を仕入れた形跡もない……。叔母さまに限らず実はお金を使えなかったという人は結構います。しかしとくに子どもがいない方、おひとりさま、子どもに迷惑をかけたくないという方は、まず自分のためにお金を使わなければいけないのです。それがなかなか難しいのですね。

偏見をなくすこと

どうしたら、自分のためにお金を使えるのか。
まずは、偏見をなくすことです。自分が幸せになるために、どう考えたらいいのかを偏見をなくして自分に問うてください。次にその問題に優先順位をつけましょう。
問題の中身は人によってちがうけれど、心配の中身は似ています。病気、介護、年金、事故、住み替え。なにが最優先か、トータルでどのくらい必要か、自分で試算してみましょう。なにがあるかわからないから、とりあえずお金を持っておこうという人が多いのですが、ここから脱却しないと幸せになれません。先ほどの叔母さまがそうでした。
そして、本を読むより、自分の経験と見識を信じたほうがいいです。難しい言葉が出てきても、噛み砕けは判断できます。判断がつけば、自分で選択が出来る。選択は、今までの経験と見識で十分です。今から弁護士になるわけではないので、新たに勉強する必要ではあまりありません。高齢後期を幸せに過ごすために、今すぐにとりかかりましょう。

<つづく>

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