特別養護老人ホーム実習。広報担当ヘルパー日記⑧
今日の多摩市は、雨上がりの青い空。
風がびゅーびゅーと強く、とても冷たい朝でした。
今日から4日間、ホームヘルパーの実習がスタートしました。今日と明日は、特別養護老人ホームでの実習です。特別養護老人ホームとは…、厚生労働省のホームページを参照すると以下のように書かれていています。
65歳以上の者であって、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においても常時の介護を受けることが困難な高齢者に対して、入所サービスを提供する施設です。要介護者(要介護1以上の方)が対象。
施設の中におられる方は、ほとんどが車椅子での移動されています。いつも私たちとは過ごしている世界とは、まったく違う世界。職員以外の動きはほとんどない、または、とてもゆっくりと動いている。自分たちの生きる世界が、いかにスピードの早い世界に生きているかを感じます。
今日は、朝礼後、入浴後の整髪(ドライヤー)、昼食の準備補助、コーラス、フラワーアレンジメントの講習に参加、排泄介助の見学等を行いました。
入浴後の整髪は、ご利用者さんの髪を乾かし、櫛で髪を整えます。また靴下、靴をはかさせていただきました。自分の意志で身体を動かせる人は少なく、「頭を上げてください」と伝えてもご自分の意志では無理で、どうしたらいいか戸惑う。10名ぐらいの方にどんどんとドライヤーをかける。お風呂が嫌で髪を乾かしている時まで泣いている方、「いいお湯でした?」と声をかけると「まぁまぁだね」とにっこりする方、反応はそれぞれ。櫛は共有で使うものでしたが、あるご利用者さんは「他人と同じ櫛は嫌!」とご自分の櫛をご用意される。心の中で「そうですよね、他人の櫛を使いたいと思わないですよね…」とつぶやく。
靴下も普通のタイプの靴下は比較的履かせやすいのですが、5本指靴下を履かせるということは非常に難しい。先輩のヘルパーさんにコツを教えてもらい行う。ドライヤーで髪を乾かす時に、「ちょっと指の間をドライヤーで乾かすと、水虫予防にもなるよ」と、アドバイスをいただく。日常の中での病気予防法、とても参考になりました。
昼食は、11時30分からスタート。食事の介助はできないので、スタッフが介助しているところを観察させてもらう。ペースト食(ご飯・おかず3種類)を一つのお皿に移して、つぶす作業を行う。初めて見るペースト食、これはどんな味がするのだろうか。どう見てもおいしそうには見えない。(そんなことを思ってはいけないだろうか)何をみても初めてで驚きの連続!ご利用者さんの状態に合わせて、刻み食、ペースト食、そして食事援助の方法が細かく分かれている。それぞれの方が、それぞれのペースで食事をしていきます。
90歳をすぎた女性の方が、食事をする前に手を合わせてお祈りをしてから、食事を召し上がられていた。それは、とても静かな光景でした。その後のコーラスの時間の時に、「私も見習います」とお声かけをしたら、「真似じゃなくて、本心からね。食事をいただけることに感謝しなければならないよ」と一言。その厳しく含蓄のある言葉が、心に響きます。
初めて施設に入った時は、身体が不自由で動けない人がほとんどなので、一見すると動きのない世界のように見えましたが、よくよく観察し、接してみると、たとえ話せなくても、歩けなくても、表情がないように見えても、目でしっかりと私を見て、心で感じているような気がしました。
午後のコーラスの時間では、みなさんと懐かしの童謡を歌いました。
靴が鳴る
お手つないで 野道を行けば
みんな可愛い 小鳥になって
歌をうたえば 靴が鳴る
晴れた空に 靴が鳴る
花をつんでは お頭(つむ)にさせば
みんな可愛い うさぎになって
はねて踊れば 靴が鳴る
晴れたみ空に 靴が鳴る
2番の歌詞のところで、自分の頭にお花をさすしぐさをされている方もおられました。一緒に歌っていると、限りある今を一緒に楽しみ、そして私の経験したことがない利用者さんの人生の時を一緒に体験をしているような感覚になりました。
今日の一日は、ほんの一部の介護の姿、人間の姿を見たにすぎません。しかし、共に“今を生きること”の喜びを感じました。施設の窓の外には、満開の桜。桜が、今この時が限りある時であること、その尊い時をよりくっきりと見せてくれたような気がします。