いよいよ居室の改修が始まります。 設計者・瀬戸健似さんに聞く「団地の魅力を生かした改修」
ゆいま~る高島平は、UR都市機構の高島平団地の地上11階建て、121戸の住棟内に分散された30戸の住宅をサービス付き高齢者向け住宅に生まれ変わらせるという試みです。住戸をバリアフリー化するととものに、高齢者が暮らしやすいような間取りに変更する改修工事が9月1日より開始されますが、その特徴などについて設計者の瀬戸健似さん(株式会社プラスニューオフィス一級建築士事務所 代表)に聞きました。
団地の魅力を活かした改修計画
〇既存の住戸から改善すべきものは?
高島平団地は1972年、当時の日本住宅公団によって建築されました。現在でも、約22ヘクタールの敷地に8000戸以上の住宅があり、単独団地としては日本最大です。
かつて、田んぼの真ん中に突如出現した巨大な団地は「豊かな未来に向かう憧れ」の象徴でした。
しかし、40余年がたち、2DK中心の間取りも課題と言われておりましたが、既存の住戸から改善すべきものは?
まず初めに、団地の特徴は何と言っても都心の住まいでありながら、建物周辺は公園のような空地や緑地があり、十分な隣棟間隔があるところです。ゆえに、冬でも日当たりがよく、一年中風通しがとても良い環境です。
高島平団地に関して言いますと、他の中層団地(4~5階)と違い高層(11階) ということから、全棟エレベーターが設置してあります。また、低層階が商店街になっている棟もあり、利便性にすぐれ、賑わいもあります。つまり、最初から高齢者にとって必要な条件がいくつか備わっています。これは良い住環境のためのポテンシャルが非常に高い場所であると言えます。
次に、間取りについてですが、40年前、4~5人家族を対象に40㎡という決して広くはない面積で「寝る場所」「食べる場所」「水を使う場所」「くつろぐ場所」など、行為ごとにスペースをつくったいわゆる田の字型プランは建築計画上ものすごく追及されており、当時の日本住宅公団や設計者を非常に尊敬しております。
それから40数年の年月が経ち、人々の住まい方も大きく変わりました。一番大きく変わったのは生活行為同士の繋がりだと思います。例えば、リビングダイニングはまさにそうですが、リビングの「くつろぐ場所」とダイニングの「食べる場所」がくっつき、同時に行えることになり、同じ空間としてつくるのが一般的なりました。水廻りもそうです。設備機器の性能が向上したこともあるのですが、お風呂やトイレを「くつろぐ場所」として使う人は多いと思います。それゆえに、徐々に手狭になり、40年前につくられた間取りは、現在にはいろいろ支障をきたすようになってきました。
前置きが長くなって申し訳ありません、それで、既存の住戸から改善・・・改善ではなくリメイクという言葉を使わせていただきます。
既存の住戸からリメイクする必要があるのは、やはり水廻りと床段差が一番だと思います。既存の水廻りはコンパクトにまとまりすぎており、スペースがあまりないのです。今回は高齢者住宅にリメイクするということで、水廻りと床段差は必須でした。そして、今回は1人もしくは2人でお住まいになる方が中心となりますので、行為と行為をゆるやかに繋げられるように広めに部屋にリメイクしたいと思いました。合わせて、住戸内の風の通りもさらによくしたいと思いました。他にもこまごまとありますが、設備機器や床仕上げなどです。
〇どのようにリメイクするのですか?
私たちは住まいを考えるとき、戸建てでもマンションでもどのような形態であれ、常にコミュニティというのを意識するようにしています。私たちが言うコミュニティとは「コミュニティ=人と人との繋がり」です。今回はゆいま~る那須と同様に玄関部分を広くしました。この場所を広くすることで、日常の利用し易さの向上はもちろん、椅子に座ってご近所さんと井戸端会議ができるような日常のコミュニティが醸成されるような場所になればと思っております。もちろんゆいま~る那須のように趣味の場所としても利用して頂ければうれしいです。ただ、共用廊下に面した窓についている面格子ですが、防犯上ついているものではありますが、これをできれば無くしたいな~と思っています。入居者の方々がこっそり取ったりしないかなと思っています。(笑)また、建物の構造上どうしても上り框のところで段差がでてきます。ここは是非井戸端会議する時の椅子として利用してほしいです。(笑)
次に水廻りです。ゆいま~る多摩平の森では全ての住戸を改修したので、住んでいる人がいない状態で何もかも気にせずに工事できました。今回の高島平では、廻りの住戸に住まわれている状況で工事をしていくことになります。いわゆる「居ながら工事」です。ですので、水廻りの縦の排水管が動かせない状態での工事になり、水廻りの位置を大きく動かせない条件があります。とはいうものの使いやすい水廻りをつくるために、壁や床のコンクリート部分を必要最低限削ったり(構造上問題ありません)、排水管を工夫してバルコニーに持っていいたりと、スポーツで言うところのパワープレイをしました。また、当然設備機器のグレードも上がっています。
あとは、要所要所に手摺を設置することはもちろん、友の会でも盛り上がりました収納スペースや通風・採光など、みなさんと模型や図面で話し合いながら検討して決めていきました。
〇つくる会を通して、参加型でA~Cの3タイプを決めました
居室は全部で3タイプありますが、これは2013年9月から毎月1回開催している「高島平で暮らし続けるしくみをつくる会(以下、つくる会)」で話し合いながら決めました。
模型をみながら参加者皆さんとの意見交換・アンケートを重ねて、A~Cタイプの3案を完成させました。
つくる会には、団地住民に加えて、周辺地域の住民、団地再生や在宅ケアのしくみづくり、高齢者向け住宅に関心のある方々が参加しています。
□Aタイプの特徴
・南面に奥行のある部屋を確保した案。
・ダイニングは最小限につくって収納を多く確保した計画。
□Bタイプの特徴
・南面に幅広の部屋を確保した案。
・ダイニングと南側居室空間をバランス良く計画。
□Cタイプの特徴
・玄関を開けたら南面まで見通せる明るいLDKをつくった案。
・3枚引戸で寝室とは、分けたり一体で使ったり・色んな使い勝手ができる計画。
第1期改修は10月中旬を予定しています。
改修が完了したら、内覧会などの開催も予定しています。
詳しい日程は、このブログでお知らせしますので、お待ちください。
なお、高島平団地2-26-2号棟にお住まいのみなさまには、ご迷惑をおかけすることになり、申し訳ございません。
改修工事期間中、騒音・振動、粉じん等が発生いたしますが、工事の安全には十分注意し施工いたしますので、
ご協力くださいますよう宜しくお願いいたします。
工事・事業についてのお問い合わせは、下記までご連絡をお願いします。
※工事に関してのお問合せはこちらにお願いします。
*施工業者:八光建設株式会社
担当者 井坂(いさか)
連絡先 090-3239-7938
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*問合せ先:株式会社コミュニティネット 高島平運営準備室
担当者 野田(のだ)
連絡先 080-4407-5512