ゆいま〜る多摩平の森
宮本嘉雄さん(82歳)の場合
(入居:2012年6月)
宮本さんはご自分を「専業主夫です」とおっしゃいます。奥様を病気で亡くされすでに約20年。娘さんは嫁ぎ、ここへの転居前は息子さんとふたり暮らしで、家事は宮本さんがご担当。だから炊事はお手のもの。ときどき娘さんがお惣菜を作って持ってきてくださるとか。「これはありがたいですよ」とにっこり。
ここ「多摩平の森」もその娘さんが教えてくれた情報からすべてが始まったそうです。
Q:転居された理由は?
宮本 ここに来る前は八王子で戸建に住んでいました。移った理由は、その家が駅から遠くて、とにかく買い物が不便だったんです。
最寄りの駅までバスで40分。少し離れた町まで行かないとスーパーはありません。家の前はゴルフ場と川と田んぼ。うちの東側、北側、南側、いずれにも他の家がないんです。
自然はたくさんあるんですよ(笑)。
ヘビにウズラ、カラスにカモ…。いろんなものがいるから環境はいいんです。朝からウグイスが一日中鳴いていますし。
しかし年をとると、環境は良くても、やはり不便さが気になりました。寝込んだ時に頼る人がいない。息子はいても仕事が忙しいですから、そう期待はできない。だから今、元気なうちに将来が安心なケア付きの高齢者住宅に住み替えたいと思ったんです。
女房は61歳の時、がんで亡くなりました。若いですよね。子どもが育っていなくなって、さあ、これからふたりで楽しもうという時に逝ってしまった。その時から僕は、将来どこか便利なところで余生を送りたい。そう思って無駄遣いをせずに備えていたんです。
Q:「ゆいま~る多摩平の森」はどこで知ったのですか?
宮本 高齢者住宅のことをインターネットなどで調べていたんですが、ある日、娘がケーブルテレビで「多摩平の森」のことを見たよと教えてくれたんです。それが今年の4月だったでしょうか。見学してみたら、すぐに気に入って、ここだ!と思いました。
そして6月には越してきたんです。娘にはもう少し慎重に決めたらどう? と言われましたけれど(笑)。
Q:住み替えの決め手は?
宮本 まず、バスに乗らなくても駅に行ける。これが最高の魅力だったですね。駅まで歩いても10分ぐらいで着きます。それにここだと、ちょっと夕涼みがてらスーパーに歩いて買い物に行くこともできます。お腹が空けば、牛丼屋が3箇所もありますし(笑)。
僕はまだ体も元気だから、電車を利用してあちこち遊びたい。
たとえば吉祥寺にある井の頭公園が好きで、よく風景写真の撮影に行ったのですが、また行きたいですね。
それと、ここは市立病院がすぐ目の前にあります。これはうれしい。何かあったらすぐに対応してもらえるじゃないですか。安心がある、これがもう1つ大きな魅力でした。
Q:介護付き高齢者住宅についてはご存知でしたか?
宮本 ある程度は知っていましたが、実はそういう介護付きの高齢者住宅というのは大丈夫なのかな? と不安もあったんです。
まず、町中の便利なところではなくて、郊外の遠いところにある場合が多い。せっかく入っても、倒産の可能性もありますよね。そういう悪い物件にあたり、お金が戻ってこなくて入居者が困っている、という新聞記事を読んだことがあります。私も実際にそういう出来事を1つ知っています。だからどうも安心できません。
ですが、ここはUR都市機構(以下UR)が関わっていますよね(編集部注:「多摩平の森」はURからの定期建物賃貸契約が結ばれている)。100%の民間ではないところに安心感がありました。
Q:お部屋選びのポイントは?
宮本 僕にとって一番生活しやすいのは、広がりのある部屋があること。あちこち迷路の中を歩くようなことはしたくなかったので、15.4帖の広いリビングにキッチンがついたBタイプにしました。このタイプには約4帖の広い納戸もついていて、それがまた魅力だったんです。荷物のかなりの部分がこの中に入れられました。
Q:お料理はされるのですか?
宮本 ハハハ、自炊はベテランですよ。女房がいる時は、家事一切は女の仕事、それで当然だと思っていたし、男は外で稼いでくるものと信じていました。女の仕事と男の仕事はきちっと分かれている、そう思っていたのですが、でも実際に女房がいなくなってみると、家事って大変だったんだなあと思いましたね。
日々の単調な仕事で、しかもそれが365日24時間。その間、同じものをたくさん作って、そればっかり食べればいいかというと、そうはかない。若い時から料理に少し興味があって、やったことはあったのですが、女房がいなくなってからは専業主夫ですよ。
男って、いざひとりになれば、なんだかんだ言ってもやりますよ。はじめは店屋物をあっちこっちから取って食うなんてこともしていましたが、すぐに飽きてしまう。やっぱり自分で作らなくてはと思ってやっています。娘がときどき惣菜を作って持ってきてくれるんですが、その作り方を教えてもらったり。娘には感謝していますよ。
Q:住み替えを実行されて、今のお気持ちは?
宮本 ようやくどうにか落ち着いてきた、という感じですね。
僕は写真が好きで、若い頃は自分で現像もしていました。そういう写真のアルバムなどは、ちょっとここでは手狭で収納できません。
ただ、もう昔の写真は見ないかなとも思います。僕は過去を振り返らない。今日と明日が大事。その先はどうなるかわからない。前へ、前へ、前へ、それが僕の心情です。
どんなに過去に栄光があっても、それは今通用しないでしょう? 昔社長だったからって、いつまでも社長ではない、そういうけじめが大事だと思うんです。
ゴルフが好きでしたが、ゴルフはかつて偉かった人が、リタイアしたのに、ゴルフの世界にそういう昔の栄光を持ち込みがち。それはくだらない。だからある日、「や〜めた」とゴルフ道具をゴミ集積場に出したんです。ケースに入ったまま一式どんと出して、30分後に見たらもうなかった。それで僕はもうすっきり(笑)。
ここの選択も同じかもしれません。まず、自分の目で確かめた。見て、これがいい、僕の条件に合った、よしっ! それですぐに決めたんです。要するにこれから先を心配していけばいいのだから。明日の朝、目覚めた時に命があったらそれでいい。ああ、今日も何かやろう!と思えればいいんです。
ここに来るとき、これまで置いてあった女房の着物など全部処分しました。もう何も残っていない。すっきりしました。私のものはここにあるものだけだから。これからはもっと身軽になろうと思っています。必要にして最小限。それがいいんです。
編集部 宮本さんはテレビをあまり見ないのだそうです。見るとしたら、ドキュメンタリーとニュースと音楽関係を少し。どうしても見たい番組は録画して、3〜4回に分けてみるのだそうです。「だって1時間も2時間もテレビの前でじっとなどしておれない。何かしないと時間がもったいないでしょう、だんだんもっている時間が短くなるのだから。今のうちに時間は有効に、大切に、無駄にしないで使いたいんです」。そのアクティブな生き方をほんの少し邪魔しているのが最近患う膝の痛み。いい膝治療を真剣に探している宮本さんです。「多摩平の森」周辺で有用な情報があればお教えください。