ゆいま~る神南ブログ

ゆいま~るセミナー開催!「 おひとりさまでも最期まで自宅は可能! ~在宅医療の最前線から語る~」


ゆいま~るセミナー

おひとりさまでも最期まで自宅は可能! ~在宅医療の最前線から語る~

         木の香往診クリニック・佐竹重彦院長に聞く

「最期まで住み慣れた自宅で」、また「自宅で家族を看取りたい」と 思っている方は多いのではないでしょうか。11月29日、名古屋市金山研修センターにて、在宅医療の第一線で活動されている「木の香往診クリニック」の佐竹重彦院長をお招きし、そもそも在宅医療とは何か、そして自宅で最期まで暮らすための心がまえ等についてお話いただきました。23名の方が参加、活発な質疑応答もあり、充実したセミナーとなりました。

木の香クリニックは、ゆいま~る大曽根、ゆいま~る神南の協力医療機関です。

↑佐竹重彦医院長

在宅医療とは何か?

多くの方は、「自宅で最期まで暮らしたい」と望まれています。家族に囲まれながら、またひとりでも自宅で最期を迎えたい、そんな方の支えとして木の香往診クリニックを開業して9年目になります。

在宅医療は、一般的な病院と何が違うのでしょうか。病院の場合は、治療して退院することが目的です。しかし、在宅医療の場合は、まずはご本人の意思を尊重し、ご家族と相談しながら望まなければ医学的な治療を行わない選択をすることもあります。そういった方針決定に基づいて医師、看護師、介護士、ケースワーカーと共有、連携しながら本人の生活を支えていきます。生命維持を目的に積極的に治療介入するのではなく、本人の望みを支えるのが目的です。

在宅医療は、基本的にはひとりで通院することが困難な方が対象です。通常、自宅や施設に月2回定期的に伺い、体調の変化を診たり、薬の処方をしたりします。水分をとる時むせるなら「とろみをつけて飲んでみてください」など、医療面・生活面でのアドバイスもします。「悪くなった時だけ来てください」と言われることもありますが、いきなり診察するというのは難しいです。関係性も含めて、その方の状態を常日頃知っておくことが大切だからです。必要ならば、病院へ紹介するなど、間に入ることもします。

在宅診療のメリットは、住み慣れた環境で過ごせることです。ただし、医療者が24時間いるわけではないので、急に状態が変わった場合、病院のような素早さで医療者が対応することは難しいです。

最期まで看取れる体制づくり

最期が近づくとどうなるのか、イメージできないことが不安につながります。個人差はありますが、だんだん動けなくなって寝たきりになり、嚥下機能が低下し食べられなくなります。ここまでは個人差によりますが、数ヶ月から数年と開きがあります。寝ている時間が多くなって、目を開けない、話さなくなる。次に、無呼吸などいつもと呼吸パターンが違ってきます。肩で呼吸をしたり、顎だけで呼吸をし出したら、かなり死期が近いです。病気によってもスピードが違いますが、イメージしておくと不安感が減ると思います。

木の香往診クリニックでは、年間約160の看取りをしています。がん末期の独居の男性(76歳)をお看取りした時は、病状に合わせて徐々に訪問の回数を増やしました。最期が近い状態が見えてきた時、本人を含め、医師、看護師、介護士、ケースワーカーで話し合い、「自宅で最期まで」という方針を確認しました。その後も連携して状態を報告しあい、必要に応じて訪問看護、訪問介護の回数を増やし、しっかり看取れる体制をつくり、訪問診療をはじめてから75日目、ご本人の希望通りに自宅で最期を迎えられました。

高齢になるほど、急に体調の変化が訪れるのは避けられません。状態が悪くなった時に自宅まで最期までいたいのか、あるいはいったんは病院で治療したいのか、ご家族がいればよく話し合って、事前に皆様の同意を得ておくことが望ましいです。病院と在宅診療、それぞれメリット・デメリットがあり、どちらがいいというわけではありません。決断したら変えてはいけないということではないので、常に自分の意思を確認することが大事です。

↑熱心に話をきく参加者の皆さん

※活発な質疑応答がありましたので、ご紹介します。

Aさん(女性) 先生の病院では複数の医師がいるとHPで拝見しました。同じ医師でなく、他の医師が行く場合もあると思います。その場合、医師間での患者さんのデータをどう共有しているのですか。また、患者さんにも同様のデータは提供しているのですか。たとえば他の病院にいく時にデータを活用できるということはありますか。

佐竹 当院ではクラウド型の電子カルテになっていますのでいつでも見ることができます。また患者さんには、診療のたびに診療内容を紙でお渡ししています。ほかの病院に対しては、すべて無作為に情報を渡すと逆に混乱してしまうので、紹介状と言う形で情報提供しています。

Bさん(女性) 名古屋市でなく、小さな市に住んでいます。在宅医師をどう探せばいいでしょうか。また、費用についても知りたいです。

佐竹 在宅を中心に行っているクリニックは都市にあることが多いです。ただ、地方でも外来を行っている先生が外来の時間外に訪問診療をするところが増えています(在宅支援診療所)。お一人で対応していることが多いですので、変わらず一人の先生に診てもらうことが良い点だと思います。どのような体制で対応されているかをご確認されてみるといいと思います。

費用は、保険の割合によって違いますが、一割負担の場合、個人宅でしたら月6000~7000円、上限が1万2000円くらいですが、お薬にかかる料金は別です。交通費を請求するところもあります。自己負担の上限の無い方は高額医療の限度額認定制度がありますが、事前に市町村などの保険者に申請が必要です。

Cさん(女性)  4年前に母を在宅で最期まで看取りました。今度は自分の番です。一人になった時、本当に自宅で最期までいられるでしょうか。

佐竹 おひとりの場合、最期を迎える時には私たちを呼べないことが多く、ヘルパーさんなどが訪問した時に発見されて連絡されることが多いです。そういうことを許容して、それでも自宅で最期までいたいという希望を持たれている方がおひとりで最期を迎えられる方になると思います。人間の最期は病気にかかわらず、一般的には先ほど述べたとおりです。病院だと生命維持が目的ですから、痰が出たら吸引して、採血データなどをみて脱水だと点滴をします。点滴をすれば水分は確保されますので痰の量は増える傾向にありますが、本人にとっては痰が出ないほうが楽な場合もあります。よって私たちは苦痛緩和のために点滴を減らす選択をすることも多いです。

また、終末期になって訪問が頻回になっても、最期に誰もいないこともある。そこが、ご家族がいる場合とおひとりの場合は違います。それを理解し、それでも「最期まで自宅」を望まれれば、おひとりでも可能です。おひとりでも苦痛のない状態を作るために、私たちがその人の最期をできるだけ楽に迎えさせてあげないといけないということです。

Cさん かかり付けの医師に、最期はどうしたいか伝えたほうがいいですか。

佐竹 どう最期を迎えたいかの意思を伝えおくといいと思います。開業医でも訪問診療を行っている医師もいますから、その医師に訪問していただけるか聞いてみてください。訪問診療を考える時期になった時、かかりつけの先生が難しい場合、相談窓口としてケアマネジャーがいます。たいていその時期にはケアマネジャーが入っていると思いますので、相談して決めるという方が多いです。ケアマネは、地域の具体的な情報を持っています。もし、ケアマネがいなくて急に脳梗塞などで入院、寝たきりということになったら、病院のケースワーカーに相談してみるといいと思います。

Dさん(男性) 独居の方で、途中で認知症になってしまった場合はどうするのですか? 後見人を立てておくとか?

佐竹 後見人や責任をもって本人の意思を保証していただく方がいる場合は、その方が本人の意思を元に判断されます。独居の場合は、ご家族との意思の確認、居ない場合は後見人の方などを立てておくことをおすすめします。

Eさん(女性) 私は、最期が近づいたら、何もしなくていいから、と言って先生に頼むことはできるのですか。

佐竹 可能です。病院と在宅は目的が違うというのは、そういうことです。病院では一般的に医学的な問題点があったら基本的に治療介入して無事に退院してもらうことがゴールです。私たちは必ずしもそうとは限らないです。最期までできるだけ安心して生活できる環境づくりが目的です。本人、家族が治療しないと望めば、緩和につながらない治療介入は控える傾向にあります。本人やご家族とで話し合いを持ち皆の納得の上で進めます。ただし、診療される先生のお考えもありますので、どういうお考えで治療されるかということは話し合ったほうがいいです。

※参加者の皆さんの熱心な姿勢に応えられるよう、今後もスタッフ一同がんばってまいります。

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